ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 分類でさがす > 産業・しごと・事業者向け > 起業・経営支援・就職 > 経営支援 > 奈良市の事業者支援 > 新たな挑戦とは?「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」でふみだす企業【伝統産業編】

本文

新たな挑戦とは?「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」でふみだす企業【伝統産業編】

ページID:0238568 更新日:2025年5月29日更新 印刷ページ表示

奈良市は、中小企業の新たな挑戦を支援します

   インタビュー写真①

こんにちは。奈良市役所の産業政策課です。わたしたちは企業の発展を通じて、まちの発展をめざしています。今回は、産業政策課が行う3つの補助事業の1つ「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」を紹介します。名前の通り、新たな挑戦を後押しする事業です。

この制度を活用した企業を紹介します。

企業:手織麻を現代の暮らしに取り入れる

株式会社岡井麻布商店

活用年度:2024年度

活用テーマ:手織麻生地のコーヒーフィルターを使った新しい取組

   機織り作業風景

トン、トン、トン、トン、トン。

岡井麻布商店の工房からは、今日も麻生地を織る音が聞こえてきます。電気はつかいません。江戸時代の創業当時と変わらない機織り機の音です。

奈良の伝統的工芸品である「奈良晒(ならさらし)」。幅45センチ、長さ120メートルの生地を3ヶ月かけて織り上げます。

かつて奈良は、高級麻織物の一大産地でした。室町時代にはすでにその原型があり、江戸時代に一大産業へと成長した高級麻織物を「奈良晒」といいます。徳川幕府の御用達品として、武士のフォーマルウェア「裃(かみしも)」や、茶道に欠かせない布「茶巾(ちゃきん)」の生地として、文化的需要を担いました。

江戸末期の1863年に創業した岡井麻布商店。時代が明治、大正、昭和へと進むにつれ、生地の主流は麻から綿へ。奈良晒の織元(おりもと)はどんどん廃業していきました。

6代目の岡井大祐(だいすけ)さんは、こう話します。

「とうとう、うちが奈良市田原地区で最後の一軒となったとき、4代目にあたるおじいちゃんが『細くでも、奈良晒を長く続けていこう』と決意して、今があります」

   インタビュー写真②

課題:手織麻の文化的需要を広げる

「今は家族4人で奈良晒を織っています。将来に向けて織り手を育てていきたいんです」

岡井麻布商店は、奈良市の施設「なら工藝館<外部リンク>」で一般の人向けに工芸教室を行っています。魅力を感じた人が工房を訪れるようになり、いずれは織り手として育っていく。そんな期待も抱いています。

   インタビュー写真③

「手織麻を、現代の暮らしに取り入れていきたいんです」

岡井麻布商店は、2003年と2010年に奈良市内に店舗を構えました。お店に並ぶ商品は、生地づくりから商品企画までを自社で手がけています。織り手を育て、伝統工芸を受け継いでいくという意味でも、文化的需要を広げていきたいところ。

岡井さんは、日々自分たちで麻を織って、つかって、見つけて、つくって、届けて。暮らしの気づきを大切にしながら、手織麻のあるライフスタイルを模索しています。

2018年には、麻本来の魅力を素のままに伝えるブランド「Mafu a Mano(マフ ア マノ)」を立ち上げます。漂白や染色を行わない、きなりの麻の美しさそのものに光をあてました。

そして2020年に発売したのが、リネンコーヒーフィルターです。

   コーヒーフィルター写真

考案したきっかけは、コーヒーの生豆を運ぶ麻袋でした。

「手織の麻でコーヒーフィルターをつくったら、どうなる?おもしろそうだな、つくってみよう」

岡井さんは亜麻(linen)、大麻(hemp)、苧麻(ramie)と複数の手織麻を組み合わせ、生地の密度を調整。10種類の試作を経て、商品化に至ります。

その後も岡井麻布商店は、リネンコーヒーフィルターを軸として、手織麻のあるライフスタイルを描いていきます。その際、奈良県内でものづくりを行う人たちとのコラボを進めていきます。

コーヒーを飲むとき、手織麻の椅子に座ってくつろいでほしい。その思いから、奈良市の椅子工房naice<外部リンク>と、こちらの椅子をつくりました。

   手織麻の椅子写真

また、コーヒーフィルターとあわせて使うドリッパーを西田金属製作所(桜井市)と、ドリッパースタンドを垣本鉄工所(三郷町)とつくりました。

こうして、岡井麻布商店の挑戦は、点から線へとつながっていきます。

挑戦:コーヒーを飲みながら、手織麻のある空間を味わう

   デミタスカップ写真

2024年度には、手織麻に包まれるカフェのポップアップ出店を、東京で行いました。岡井麻布商店は「新たな挑戦支援補助金」を活用して、デミタスカップと車に積みこめる移動式什器を製作しました。

デミタスカップはイラストレーターの森ひろこさんが絵付を、陶芸家の畑中篤さんが作陶を行いました。製作を依頼する際、岡井さんは「楽しい感じでいきたいんです」と伝えました。具体的なかたちやデザインについては、作り手に委ねました。

移動式什器を組み立てると、奈良晒に包まれる空間が生まれます。製作において大切にしたのは、岡井麻布商店の商品開発の合言葉でもある「ワクワク」が伝わること。そして“伝統工芸士”の岡井大祐ではなく、同じ時代を生きる人同士として、気軽におしゃべりできる空間をつくることでした。

   空間づくり写真

挑戦は、次の挑戦を引き寄せます。2024年度のポップアップ出店により、岡井麻布商店の次なる挑戦が見えてきました。

次の挑戦:奈良晒のカフェを構えたい

   岡井麻布商店外観

「カフェをはじめたいんです。リネンコーヒーフィルターで淹れたコーヒーを提供しながら、麻の手織体験が行えるカフェです。本社の一角を改修して、機織り機も常設したい。手織麻を知り、見て、触れて、感じ、使ってもらう場です」

手織麻を、現代の暮らしに取り入れていきたい。その思いから、新たな挑戦を続ける岡井麻布商店。過去には手織麻の肌着を試作したことで、技術的な難しさが明らかになりました。挑戦は試行錯誤の連続です。日々自分たちで麻を織って、つかって、見つけて、つくって、届けて。暮らしのなかでの気づきを大切にしながら、手織麻のあるライフスタイルを模索しています。

インタビューの最後に、田植え間近の風景を眺めながら、岡井さんの話していたことが印象的でした。

「新たな挑戦は、手織麻の商品づくりに限りません。手織麻のカーテンを使いたくなる窓をつくってみる。そんな挑戦もしてみたいんです」

   岡井麻布商店内観

地域:仲間と切磋琢磨する奈良晒

こうして岡井麻布商店が挑戦をはじめたきっかけは、奈良でロングセラーのモノづくりをめざすプロジェクト「TEIBAN展」の仲間との出会いでした。

「TEIBAN展から変わっていったんです。林業、染色、食品、革製品、ファッションなどの分野の人たちが集まって切磋琢磨しています」

コロナ禍には、TEIBAN展の仲間たちとのやりとりに刺激を受けたといいます。

「店舗営業がままならない中、一度店を畳んだほうがよいのでは?とも考えました。でも、みんなは『時間ができたから、勉強しよう』『商売を見直す良い時期だな』という。だからぼくも前向きな気持ちに臨むことができました」

   奈良晒

2025年、岡井麻布商店は松屋銀座の「創業100周年記念のれん」を織り上げました。

挑戦を続ける岡井麻布商店には、いろいろな相談が集まりつつあります。

 

(2025年5月9日インタビュー 編集・撮影 toi編集舎 大越はじめ)

「奈良市中小企業等新たな挑戦支援補助金」を活用しませんか

あなたの事業も、新たな挑戦をめざしませんか?

https://www.city.nara.lg.jp/site/jigyosyashien/180941.html

窓口のご案内

制度に興味のある人は、こちらまでお気軽に問い合わせください。

奈良市役所 観光経済部 産業政策課 総務係

TEL:​0742-34-4741

E-mail: sangyoseisaku●city.nara.lg.jp(●を@に変更しメールを送信ください)